ステビア草の不思議な力で国際貢献

セキュリティー研究 2021 no.270 より

株式会社イクス
代表取締役 米倉伸祥

1955年北海道生まれ。札幌北高校。学習院大学大学院政治学研究科修了。大学院途中で「国際浪人塾」(若宮清 塾頭)に参加。激動のフィリピン視察など様々な体験をする。大学院修了後は、出版社の設立、格闘家プロデュース、新聞社での国際政治関係コラム執筆の他、出版プロデュースにも携わる。1999年、ステビア事業を中心に株式会社イクスを設立。20年にわたり代表取締役を務め海外でのボランティア活動にも取り組む。現在は認知症対策サプリメントの開発を白澤卓二医博と進める。

―― 本日は、株式会社イクスの代表取締役 米倉伸祥 様にお話を伺います。

米倉
平成11年に株式会社イクスを立ち上げ、ステビア・エキス製品を中心とした「健康食品」の製造・販売の事業に取り組んで、今年で23年目に入りました。

―― 米倉社長のプロフィールをお聞かせください。

米倉
昭和30(1955)年4月19日生まれ、北海道寿都町出身です。学歴は札幌北高校を卒業し、米国イェール大学の夏期講座に参加した後に、学習院大学法学部政治学科に入学しました。卒業後は同じ学習院の大学院政治学研究科に進み、安倍能成記念教育基金奨学金を受けながら飯坂良明教授の下で政治学を学びました。修士論文は「戦後の日韓政治経済関係史」です。

アジア経済研究所筆頭理事の萩原氏からマレーシア研究での入所をすすめられるなど、ありがたいお誘いを受けましたが、その道には進みませんでした。

そんな時に「国際浪人塾」の存在を知りました。昔の大陸浪人になぞらえて、「国際的に通用する人材を全寮制、全額無料、外国放浪を行いながら育てる」というフレーズに心を動かされ、大学院途中で国際浪人塾を受けました。

全国から600人以上が応募する中で合格した18名の中の1人に選ばれました。塾頭は1983年8月、フィリピン・マニラ国際空港でベニグノ・アキノ氏が暗殺された現場に立ち会い、本誌セキュリティ研究の第217号にも登場されている若宮清氏です。

マルコス政権末期の戒厳令下のフィリピンで護衛を付けて、マニラ中をサイドカー付きバイクで視察をした時をはじめ、本当に命懸けの様々な体験をさせていただきました。忘れられない青春の思い出です。

大学院修了後は、出版社を設立したり、日本語学校の拡充に関わったり、ある格闘技の団体の社団法人化のプロデュースをするなど様々な社会経験を積みました。そして新聞社で国際政治関係のコラムを書くかたわら、長年にわたり出版プロデュースに携わってきました。ジャンルは多方面にわたり、石原裕次郎の親友・山本淳正氏が裕次郎との青春を語る著作は二度出版させていただきました。また、上江洲義秀氏の三作の著作をはじめ、スピリチュアル関係の著作も数多く手がけて参りました。

―― 米倉社長がこの会社を起業されたきっかけをお話しください。

米倉
正直に言うと、それまで健康食品にはそれほど関心はなかったのですが、たまたま親しい先輩の依頼で、“脳細胞を活性化する”という健康食品の販売のお手伝いも経験はしていました。

そんな折、懇意にしていた方から、「米倉さん、埼玉県の浦和に素晴らしい商品を開発した社長さんがいる。同じ素材が健康食品にも農業の有機肥料にもなる。是非とも一度話を聞いたらいかがか?」と声をかけていただいたのです。平成10(1998)年のことでした。

健康食品には興味はありませんとお答えしたのですが、せっかくですからと強い推薦を受けたので、当時、埼玉県浦和市にあったJBBステビア研究所(佐藤直彦社長)を訪ねました。

そもそも私たちが知るステビア甘味料は、ステビア草の葉っぱから甘味成分だけを取り出して精製した白い粉の天然甘味料です。しかしJBBステビア研究所のステビアは、ステビア草の茎を中心に葉も加えて、煮沸・濃縮し発酵・熟成させた濃縮エキスでした。

このエキスを使うと果物が甘く美味しくなる、野菜がみずみずしくビタミン・ミネラルが豊富になる、ウシやブタ、ニワトリが元気になる…と説明を受けました。 ステビア有機肥料で育てたリンゴを試食させていただいたところ、あまりの美味しさ…、ただ甘いだけでなく、何とも言えない上品な味わいに、この「ステビア・エキス」の持つ潜在力を感じさせられました。

これだけ家畜が元気になり、農作物が美味しくなるのだから、人間が飲んでも良いはずだと、農家の方がステビア・エキスを飲み始めたところ、とても良い結果が出たとの報告が続出したそうです。そこでJBBステビア研究所では、安全性検査をしっかりと経て、ステビア・エキスの健康ドリンクの開発に踏み切ったとのお話を伺いました。そこで私は少し突っ込んでエビデンスについて質問したのですが、研究所の佐藤社長は、私が質問することに全て的確に答えてくださったのです。

その日私は、何か特別なパワーを持つ物質に出会えたかも知れないと思いながら帰路につきました。

―― 甘味料でない、ステビア・エキスの存在を初めて知りました。

米倉
ここで不思議なことが起こります。

浦和訪問からほどなくして、大変にお世話になった方が重篤な病気にかかったのです。名医の執刀により手術に成功し、医師の許可を得て入院中も退院後もステビア・エキスを飲んでいただいのですが、担当医や周囲も驚くほどの回復ぶりをみせたのです。

その後、短期間に症例は違うものの類似の事例を目の当たりにし、ステビア・エキスを世に広めたいと決意しました。

そして私がそれまでに築いた出版関係の人脈を活かして、青春出版社から『ステビア草の神秘』を出版させていただきました。

併せてJBBステビア研究所からステビア・エキス製品を販売する権利をいただき、平成11(1999)年に「株式会社イクス」を設立し、製薬会社である武田薬科学研究所に製造をお願いし、本格的に販売をはじめました。

イクスはフランス語のエックスです。ステビア・エキスのこの不思議な力は、未知のビタミン「X」の力によるものだという思いを込めて社名にしました。

―― もう少し、甘味料ステビアとステビア・エキスの違いについて教えていただけますでしょうか?

米倉
昭和43(1968)年、サッカリン等の人工甘味料に発がん性があるとして使用禁止になった後、日本の化学メーカーが開発したものが甘味料ステビアです。南米インディオの間では長年薬草として用いられてきたステビア草の葉が“とても甘い”ということに注目した農林省(当時)が、1970年にステビア草を輸入し、試験栽培が始まったのです。

その後、日本の化学メーカーが、ステビア草の葉からステビオサイドという成分を抽出して精製し、砂糖の250~300倍の甘味がありながら、カロリーは90分の1という大変に優れた天然甘味料を開発しましたが、今では冷凍食品やダイエット食品などに幅広く使用されています。

当初は九州を中心に、日本全国にステビア草栽培農家が広がりました。JBBステビア研究所は甘味料原料の〝葉〟を出荷した後は無用として捨てられてきたステビア草の〝茎〟にこそ、農作物を美味しくしたり家畜を元気にしたりするもの凄いパワーが秘められていることを発見し、濃縮エキスを完成させたのです。

このエキスはステビア草に含まれる天然成分を生かすため、科学的抽出法は一切行っていません。厳選されたステビア草原料を自然乾燥させ細かく砕き、天然水を用いての煮沸濃縮、自然発酵、熟成とトータル約2年の歳月をかけて作り出すものです。茶色の液体で、甘く苦い味がします。

その開発の中心になったのが鹿児島の「島田企画」です。熟成タンクの貯蔵所にはパイプで水を流し、温度管理を徹底させて熟成発酵に最適な環境をつくるよう努力していました。ミネラル分の豊富な上流の霧島天然水を煮沸に使い、カビの発生や腐敗をのりこえて完成させたという苦労話も聞きました。

このエキスは開発者の努力と研究者の理解により、東北大学農学部・福島県立医科大学・千葉大学薬学部などの国公立大学を中心に複数の機関で研究を重ねていました。

ステビア・エキスの最初の理解者は、東北大学農学部でした。佐藤実教授の研究室では、ニジマスの実験でステビア・エキスに緑茶の五倍の抗酸化力があり、ステビアがヒドロキシラジカル(もっとも酸化力の強い活性酸素)をも除去することをつきとめました。

また、神尾・富田両教授の研究室では、ステビア・エキスの「乳酸菌やビフィズス菌の有用菌を増殖させ、O-157、サルモネラ、黄色ブドウ球菌などの有害菌を殺菌するいう“選択的殺菌効果”」が確認されたのです。

福島県立医科大学では「ヘリコバクター・ピロリ菌への殺菌効果」「試験管レベルでの抗HIV活性」、大阪府立公衆衛生研究所では「H5N1強毒性鳥インフルエンザウイルスの感染の阻害効果」が、それぞれ確認されました。

千葉大学大学院薬学研究院では「顕著なインスリン抵抗性改善作用」、群馬大学医学部では「ステビア・エキスのC型肝炎ウイルス薬としての可能性」が研究され、2008年のアメリカ肝臓学会および第44回日本肝臓学会でその成果が発表されました。

このように数々の研究が生理活性物質としてのステビア・エキスの有用性を報告しています。

初めて訪問した時に、JBBステビア研究所の佐藤社長が、農業分野でも健康分野でも、いかにステビアが優れているかを熱弁し、私の質問にも的確に答えてくれたのは、こうした研究を積み重ねたことの自信からだったのだと思います。

―― ステビア農法が優れているということが話題になったのは、少し記憶に残っています。

米倉
ステビア熟成発酵エキスはまずは農業用資材として用いられ、高品質な野菜や果物の育成に使用されていきました。「農作物の健全な成長の促進、収穫量の増加、色艶の良化、残留農薬の分解、日持ちの良さ、糖度の向上、果樹の実落ちの減少、有用菌や微生物の活性化による土壌の健全化」など多方面にわたる効果がもたらされたのです。

米穀流通業者によるステビア米のブラインドテストでは最高品質の評価を受けたり、有名な千疋屋で一箱一万円で売られる高品質なイチゴや皇室に献上されるメロンを生産する農家もあらわれました。多くの生産者たちが気候や土壌を考えて試行錯誤を繰り返し、それに築地青果市場、大田青果市場等の流通関係者がご理解を示し、ステビア栽培農作物の特設コーナーまで設けてくださったことも大きかったと思います。

健康ドリンクについては、なかなかご理解が得られず苦戦をした時期もありましたが、表現は難しいのですが、特にC型肝炎の患者さんの間に徐々に口コミで評判が広まり、ついに3年目に大きなブレークの時期を迎えることが出来ました。この23年間よく続けてこられたとの感慨も自負もありますが、今、第二のスタートアップを目指しています。

―― 御社の国際的な活動についてお聞かせください!

米倉
このステビアの不思議な力を海外の方にも知っていただきたいという思いの中で、当社の海外活動としてはアメリカ・中国・ブラジル・フィリピンなどでのものがありますが、なかでもミャンマーには特別な思い入れがあります。

ある市場調査でミャンマーを訪れた際に、ミャンマー政府の情報局長に呼ばれ、「シャン州などの奥地の辺境地帯で住民の生活向上のためにステビアを栽培したい」と打診されたのです。意外な申し出に驚きましたが、その後、再訪して政府上層部と情報交換をしました。

当時、自民党顧問の岩倉具三氏が、ミャンマー奥地での麻薬アヘンの原料となるケシ栽培の代替事業としてソバ栽培プロジェクトを遂行していましたが苦戦されており、替わりにステビア草を育てて地元住民の方の収入を確保しようということでした。

2002年冬、この計画に対し、羽田 孜 元内閣総理大臣に全面的なバックアップをいただけることになりました。そしてミャンマー国の薬物乱用統制中央委員会(CCDAC)より、2003年2月、羽田元総理及び国会関係者、JBBステビア研究所及びミャンマー交流援護会及び私が首都ヤンゴンに招待され、羽田孜元総理大臣を団長に数十名のデレゲーションでミャンマー入りして、ステビア草の記念植樹を行いました。

羽田元総理とキン・ニュン第一書記(首相)、ティン・フライン内務大臣(ステビアプロジェクト責任者、CCDAC議長、日本ミャンマー友好協会会長)、ウ・ウィン・アウン外務大臣(CCDACミャンマー国麻薬撲滅プロジェクト支援事業副議長)が、今後の麻薬撲滅運動の展開における日本の協力について話し合いました。

株式会社イクスとして、麻薬撲滅運動に1万ドルを寄付すると共に、ミャンマー奥地のシャン州に6,000人分の生活用水を確保出来る8カ所のコンクリート製ため池を寄付いたしましたが、わずかでもミャンマーの国民の皆さまの生活の質の向上に、お役に立つことができて、大変にうれしく思っております。

本年、再びの軍事クーデターが起こり、大変に心配をしておりますが、そんな中でもミャンマー交流援護会から、「実験農場を幅広く展開したシャン州の中で、ステビア草栽培に期待する声がまだまだ根強い」という連絡を、つい最近いただきました。

ステビア草そのものを健康ドリンク原料として輸出することに期待するのでなく、農業資材として幅広くミャンマーの農業発展に寄与出来れば本当にうれしいです。

アメリカ・ニューヨークには、和食とフレンチの融合したレストラン設立を試みに行き、ブラジルにはアガリクスの原産地を探訪に行き、そこで南米薬用植物の権威の橋本梧郎博士の存在を知りました。

また北京には江沢民主席の主治医にお会いしに行ったのも良い思い出です。

―― まさに国際浪人として世界をまたにかけての大活躍ですね! 素晴らしいです。さて、御社で今いちばん注力していらっしゃる、製品をご紹介ください。

米倉
日本における認知症患者は毎年増加し続け、健康医療分野の一大問題になりつつあります。

認知症にならず、身体も健康のまま老いる――という誰もが理想とする生活を実現するお手伝いをするために、アンチエイジングの権威の白澤卓二医学博士(順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授を経て、現在は白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長)にご提供いただいたレシピに基づいて、「脳の健康長寿」のための栄養成分を配合した新商品「ベストブレイン」を投入します。

弊社としては認知症対策の切り札「白澤メソッド」として広めていきたいと祈念しています。

もちろんベストブレインにステビア・エキスが含まれていることは言うまでもありません。

―― 今後、社長が目指されるのは?

米倉
おかげ様で、これまでステビアの普及には多くの大学の研究機関や名医と呼ばれる方々のサポートをいただいてきました。そうした中で、名医や最先端の研究者の中に、西洋医学以外の漢方やアーユルヴェーダなどに関心を持たれる方、物理次元と不可視のものの関連性に注目される方が少なからずおられるのを知ることができました。

個人的見解ですが、腸と脳が相関するように、心と体、見えるものと見えないものも互いに密接につながっていると思います。

今後も、謙虚な姿勢で、予防医学に少しでも寄与できるサプリメントの開発や生活習慣の改善を提言し続けていきたいと考えております。

―― どうもありがとうございました。